小林英且展(10/1)
小野画廊2にて。(9/26〜10/1)

スキルの極地のひとつ、という気がします。。。

昨年の「やぶのなか」での赤い風景の中の女性、先日のスルガ台画廊でのグループ展に続いて、今回はいよいよ個展で拝見する小林さんの作品。とにかく期待は相当大きかったのですが、無論裏切られることはなく。

主に、女性の肖像が登場する作品。
なかでも、奥の壁に展示された、薄い色彩で構成された作品に惹かれます。
先日のスルが台画廊でも拝見したスタイルの作品ですが、水の中でたゆたう、横たわる女性とともにアロワナや海の植物が描かれていて、それはおそらく水の中なのだろうけど、むしろ宙…虚空に浮かんでいるような...観ていてこちらの心の中にも浮遊感が広がっていくような。

大きさは同じくらいで、質感が違う作品も。
こちらはもっと少ない色の数で、画面表面も荒めというか、わざと風化したような感じに仕上げられ、女性の服の部分だけ砂が混じったようなふうになっているという作品。描かれるものこそ現代なのですが、画面の質感から古代のイメージも湧いてきて、独特の静謐感が感じられます。
この作品はこれからのスタイルなのかな、と思ったら、こちらの方が古く、しかも相当前に制作されたものとのことで。

他にも小品がたくさん。
小林さんが描く花はどんなだろう、という思いがあったので、今回一輪咲きの花の小品がいくつかあり、日本画のようでもありながら、洋画のような感じも...。

小林さんの作品はどうやって制作されるのかずっと気になっていて、今回ようやくご本人にお話を伺えたのですが、やはりパネルに石膏を塗って、それを彫って線を出しているとのことで。
これだけ伺うと他にもそういう方はけっこういらっしゃる、で終わるのですが、小林さんが違うのはその精微さ。例えば女性の髪の流れは、たいへん細く丁寧に1本1本彫り込まれた曲線で表現されてたり。とにかくその細やかな仕事っぷりには脱帽です。
一瀬幸信展(10/1)
SOLにて。(9/26〜10/1)
http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/EXHIBITION/2005/20059isse.htm

これまでと違う方向へと向かう「和」。
かなりの迫力と、濃く深い世界を感じる作品群。

いちばんインパクトがあったのが、板に描かれたいちばん大きな作品。
板に金の箔が全面に施され、その画面中央に、樹の幹を思わせるうねるような太い黒の部分があり(よく観ると絞った布のような感じで描かれているところも)、まわりに紅葉が、あるものは赤く、あるものはシルエットが抜かれたように舞っていて。さらに、無機的なもの...細長い長方形や版が取り込まれていて、描かれる風景の時代、時間のイメージが実に、これまで体験したことがないという意味で「曖昧」な印象の作品で。
「和」のイメージでありながら、こういうふうに濃厚で深い質感というのはあったかな、と。
一瀬さんの説明では、この幹のようなものは、座る女性が振り返る姿が基になっていて、それがどんどん変化していったとのこと。なるほどそう言われるとそう見えてきて、作品の過程を感じることができたのが面白かったです。

他に、漢字をデフォルメしたものも。
「人」や「心」といったものはある程度原形を留めていて分かるのですが、それ以外のものはすでに基の形がないほどになっていて。そしてそのまわりに、和紙を切ってできた銀杏や紅葉の葉が舞うように施されているのも印象的。この部分だけ版を押したように盛り上がっていたので、最初はどうなっているんだろう、と思ったのですが、和紙と聞いてそういうところにも面白さを感じたり。

入口左手の奥の壁には、抽象的な作品が。
主に金と赤という強い色彩が目を捕らえ、これがまた相当に「濃い」世界で...うねる曲線と正三角形とが同じ画面の中にあって、それぞれの形から受ける印象の違いに戸惑いつつも、時間をかけて観ていると見えてくる不思議な奥行き、踏み込んだら戻って来れないような深い世界に圧倒されて。

一瀬さんのお話の中に「領(りょう)」という言葉が再三出てきたのが印象に残ってます。
小さい子どもに絵を教えているときに、その子どもたちから空気の色を尋ねられて、改めて気付かされた本質的な疑問に対峙したり...。かなり抽象的なイメージと真摯に向き合う姿勢が興味深かったです。